1.【概要】:
スカパーJSATホールディングスは、宇宙通信事業とメディア配信事業を中核とする総合通信企業です。2025年3月期第3四半期(2024年4-12月)の業績は、営業収益918億円(前年同期比+0.9%)、営業利益213億円(同+3.6%)、純利益144億円(同+7.7%)と緩やかな成長を維持。新衛星「JSAT-31」調達やWeb3領域参入など次世代投資を加速しています。
2.【業績予想】:
項目 | 2025年3月期予想 | 前年比 |
---|---|---|
営業収益 | 1,240億円 | +1.7% |
営業利益 | 280億円 | +5.5% |
親会社株主帰属純利益 | 190億円 | +7.1% |
3.【財務項目】:
財務項目 | 金額 (百万円) | 前年同期比 (%) |
---|---|---|
営業収益 | 91,860 | +0.9 |
営業利益 | 21,285 | +3.6 |
営業利益率 | 23.2% | +0.6pt |
経常利益 | 21,194 | +1.2 |
親会社株主帰属純利益 | 14,404 | +7.7 |
総資産 | 394,646 | -108(前期比) |
流動資産 | 223,654 | -76(前期比) |
固定資産 | 170,991 | +3(前期比) |
流動負債 | 67,839 | +7,641(前期比) |
固定負債 | 51,728 | -21,501(前期比) |
自己資本比率 | 69.1% | +2.4pt(前期比) |
現金及び現金同等物 | 116,776 | +2,454(前四半期末比) |
4.【損益計算書(Income Statement)からの洞察】:
項目 | 分析結果 |
---|---|
収益構造 | 宇宙事業収益微減(-0.9%)に対し、メディア事業の営業利益39%増が成長牽引 |
利益率向上要因 | メディア事業の通信費削減(-18億円)と減価償却費削減(-8億円) |
リスク要因 | 営業外費用が前年比33.6%増(主に持分法損失増加) |
5.【貸借対照表(Balance Sheet)からの洞察】:
項目 | 分析結果 |
---|---|
資産健全性 | 現金保有高1,168億円で有利子負債(長期45億円)の2.6倍超 |
投資戦略 | 衛星設備投資155億円+NTN技術ラボ投資68億円 |
財務安定性 | 自己資本比率69.1%で通信業界平均(約40%)を大幅上回る |
6.【キャッシュフロー計算書からの洞察】:
項目 | 分析結果 |
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営業CF | 366億円(+57% YoY)で安定した現金創出力 |
投資CF | 183億円支出(衛星関連投資144億円) |
財務健全性 | 長期借入金101億円返済による負債圧縮 |
7.【分析・評価】:
項目 | 評価(5段階) | 理由 |
---|---|---|
収益性 | 4 | 営業利益率23.2%で業界平均(15-20%)を上回る |
安全性 | 5 | 現金保有が有利子負債の2.6倍で極めて健全 |
成長性 | 4 | 宇宙光通信/HAPS等次世代投資が2026年以降収益化 |
効率性 | 3 | 総資産回転率0.23と設備集約型ビジネスの特性 |
キャッシュフロー | 5 | 営業CFが設備投資額の2倍超の安定性 |
8.【総括と投資判断】:
【成長とリスクのバランス】
- 強み:衛星通信分野での技術優位性+1,168億円の戦略的資金余力
- 懸念:4K放事業終了に伴う収益減少(21億円)の持続的影響
【株価評価】
- 予想PER(18.3倍)が通信業界平均(20倍)に対して割安
- 配当利回り2.1%+自己株買い(14.3百万株保有)で株主還元重視
【投資アドバイス】
- 短期的:28.6%増配の配当性向向上を材料に利回り追求型に適性
- 長期的:2026年新衛星ビジネスとWeb3展開で成長期待
9.【課題】:
- 放送トラポン収入の継続的減少(-21億円)
- HAPS/Orbital Lasersの研究開発リスク
- 衛星ライフサイクル(15年)に伴う設備更新圧力
10.【結論】:
スカパーJSATは財務基盤が堅固で、配当増額と自己株買いによる株主還元姿勢が明確。宇宙事業では政府契約獲得(高速道路10年契約等)で収益の持続性を確保しつつ、HAPSや光通信衛星など次世代技術に1,168億円の資金を活用できる点が強み。ただし、メディア事業の加入者純減(△163千件)と競争激化が課題。現時点でPBR1.0倍近辺と評価面で割安感があり、5段階評価で4.0。安定配当を求める投資家には現金保有の多さから安全度が高く、成長性を求める場合は2026年打上げのJSAT-31衛星の稼働状況を注視すべき。短期的な買い材料として27円配当(予想利回り2.1%)、中期的には宇宙光通信の商用化進展が株価刺激要因と判断します。