9432 日本電信電話 決算分析レポート

2025年3月期第3四半期決算短信

1.【概要】:
日本電信電話(9432)は、総合ICT事業とグローバルソリューション事業を中核とする情報通信企業です。2024年度第3四半期の営業収益は前年同期比3.4%増加しましたが、営業利益は5.9%減少し、純利益は15.9%減少しました。本レポートでは財務状況と事業セグメント分析を詳細に行い、投資判断の材料を提供します。

2.【業績予想】:

項目2024年度通期予想前年比
純利益1.1兆円-14%
年間配当5.20円+2%

3.【財務項目】:

財務項目金額(百万円)前期比
営業収益10,049,724+3.4%
営業利益1,399,233-5.9%
営業利益率13.9%-1.5%pt
経常利益1,341,686-13.8%
純利益850,691-15.9%
総資産30,603,365+3.4%
流動資産9,087,568+6.8%
流動負債9,353,570+5.7%
自己資本比率33.2%-0.1pt
1株当たり利益10.15円-14.6%

4.【損益計算書からの洞察】:

項目分析結果
収益構造グローバルソリューション部門が7.3%増収(3.4→3.6兆円)で成長牽引
費用要因人件費6.3%増(2,312億円)が利益圧迫の主因
収益性営業利益率13.9% →ICT事業部門利益率が18.2%から18.0%へ低下

5.【貸借対照表からの洞察】:

項目分析結果
資産健全性現預金21.9%増(1.2兆円)で流動性強化
負債リスク短期借入金1.29兆円増加(2.5→3.8兆円)
資本政策自己株式取得額1,436億円(前年比▲26%)

6.【キャッシュフロー計算書からの洞察】:

項目分析結果
営業CF1.08兆円(前年同期比▲24%)大幅減
投資活動データセンター拡張で投資1.46兆円
フリーCF△3,800億円(営業CF1.08兆-投資1.46兆)

7.【分析・評価】:

項目評価(5段階)理由
収益性3営業利益率低下だがグローバル部門が成長維持
安全性4現預金1.2兆円+自己資本比率33%で安定基盤
成長性3グローバル部門7.3%増も国内ICTは低成長
効率性2流動比率97.2%で短期支払能力に懸念
キャッシュフロー2営業CF24%減が最大の課題

8.【総括と投資判断】:
成長性とリスクのバランス
グローバルソリューション部門の7.3%増収が光るものの、人件費増加と金利負担増が収益を圧迫。1.2兆円の現預金残高と33%の自己資本比率で財務基盤は堅固だが、営業キャッシュフローの24%減が懸念材料。

株価評価の観点
予想PER(13.0円予想EPS)は業界平均並み、配当性向79%は継続性に注視が必要。再生エネ資産売却(1,336億円)が株価下支え要因に。

9.【課題】:

  • 人件費増加率(+6.3%)が売上増加率(+3.4%)を上回るコスト構造
  • 営業キャッシュフローの大幅減少(△24%)
  • 短期借入金の急増(+50.6%)による利払い負担

10.【結論】:
日本電信電話はグローバル事業の成長が期待できるものの、国内ICT事業の収益悪化とキャッシュフロー減少が課題です。配当増額(+2%)と自己株買い(1,436億円)で株主還元を強化していますが、営業利益率13.9%と前年比1.5%ptの低下は見逃せません。課題解決のためには、①人件費抑制策の強化、②収益性の高いデジタルサービスの拡大、③海外事業の収益改善が鍵となります。短期的には配当目当ての投資が有効ですが、中長期ではグローバル部門の成長持続性を注視する必要があります。現時点では「保有」判断が適当と判断されますが、次四半期のキャッシュフロー改善度合いが重要な指標となります。