【概要】日立建機株式会社は、建設機械製造および関連サービスの提供を主力事業としています。2025年3月期第3四半期の業績では、売上高が前年同期比1.7%減少し、営業利益も15.0%減少しました。純利益は12.3%減少しており、厳しい市況下での業績を反映しています。本レポートでは、財務状況や業績動向を詳細に分析し、投資判断に役立つ情報を提供します。
【財務項目】
- 売上高(Revenue)
- 991,277百万円(前年比△1.7%)
- 売上総利益(Gross Profit)
- 314,660百万円(前年比△1.1%)
- 営業利益(Operating Income)
- 104,488百万円(前年比△15.0%)
- 営業利益率(Operating Margin)
- 10.5%(前年比△1.5ポイント)
- 営業外収益・費用(Non-Operating Income/Expenses)
- 金融収益:4,769百万円、金融費用:23,149百万円
- 経常利益(Ordinary Income)
- 100,226百万円(前年比△8.9%)
- 純利益(Net Income)
- 69,338百万円(前年比△12.3%)
- 総資産(Total Assets)
- 1,867,552百万円(前年比+1.7%)
- 流動資産(Current Assets)
- 1,064,270百万円(前年比△1.2%)
- 固定資産(Non-Current Assets)
- 803,282百万円(前年比+5.9%)
- 流動負債(Current Liabilities)
- 700,900百万円(前年比△3.7%)
- 固定負債(Non-Current Liabilities)
- 308,703百万円(前年比+5.3%)
- 純資産(Net Assets / Equity)
- 857,949百万円(前年比+5.3%)
- 株主資本(Shareholders’ Equity)
- 809,885百万円
- 流動比率(Current Ratio)
- 151.8%(前年比+3.6ポイント)
- 自己資本比率(Equity Ratio)
- 43.4%(前年比+1.8ポイント)
- 負債比率(Debt Ratio)
- 56.6%(前年比△1.8ポイント)
【損益計算書(Income Statement)からの洞察】
【売上高(Revenue)の動向】
- 売上高は前年比で1.7%減少しました。この要因として、北米や西欧での油圧ショベル需要の減少が挙げられますが、アフリカや中近東での需要増加が一部を補っています。
【利益率の分析】
- 営業利益率は10.5%で、前年比で1.5ポイント減少しています。これは市況悪化に伴う物量減少や間接費の増加によるものです。業界平均と比較すると、日立建機の利益率は中程度に位置付けられます(情報源:業界レポート、Bloomberg)。
【費用の構造】
- 売上原価は前年比で減少している一方、販売費及び一般管理費は増加しています。特に研究開発費や人件費が増加しており、これは成長投資の一環と考えられます。
【貸借対照表(Balance Sheet)からの洞察】
【資産の状況】
- 総資産は増加していますが、流動資産は微減、固定資産は増加。**流動比率は151.8%**で、短期的な支払い能力に問題はありません。
【負債と資本のバランス】
- 自己資本比率の向上が見られ、財務健全性が高まっています。負債の構造もバランスが取れており、長期負債の増加は設備投資や成長戦略の反映です。
【財務の健全性】
- 有利子負債の増加は見られますが、キャッシュフローの改善により、負債の管理は適切に行われています。株主資本の増加は主に利益の積み上げによるものです。
【キャッシュフロー計算書(Cash Flow Statement)からの洞察】
【営業キャッシュフロー(Operating Cash Flow)】
- 営業キャッシュフローは純利益を上回っており、キャッシュ創出能力が高いことが確認できます。推移も安定しています。
【投資活動と財務活動のキャッシュフロー】
- 投資活動では設備投資やM&Aに伴うキャッシュの流出が見られます。財務活動では、借入金の返済や配当支払いがバランス良く行われています。
【フリー・キャッシュフロー(Free Cash Flow, FCF)】
- FCFは増加しており、配当や株主還元、再投資に利用されています。
【総括と投資判断】
【企業の成長性とリスクのバランス】
- 収益性は短期的に低下していますが、成長性と財務の健全性は改善の兆しを見せています。特にサービス部門や新興国での成長が期待されます。
【株価の評価】
- P/E比率などの具体的な数値はここでは提供できませんが、業績予想と現在の株価から判断すると、中長期的には割安感があると考えられます。
【投資家へのアドバイス】
- 短期的には市況の動向に注意が必要ですが、長期的には成長ポテンシャルがあるため、慎重な投資判断が求められます。リスクを管理しながら投資機会を探ることが推奨されます。
【収益性の分析・評価】
- 評価: 中程度。
- 営業利益率: 10.5%(前年比△1.5ポイント)
- 業界平均と比較すると、改善の余地があります。
【安全性の分析・評価】
- 評価: 高い。
- 自己資本比率: 43.4%(前年比+1.8ポイント)
- 流動比率: 151.8%(前年比+3.6ポイント)
【生産性の分析・評価】
- 評価: 中程度。
- 売上総利益率は前年同期と比較して安定していますが、市況の影響を受けています。
【効率性の分析・評価】
- 評価: 中程度。
- 販売管理費の増加が見られるが、成長投資の一環として理解できます。
【成長性の分析・評価】
- 評価: 高い。
- 売上高の減少は一時的で、新興国やサービスセグメントの拡大が期待されます。
【キャッシュフローの分析・評価】
- 評価: 高い。
- 営業キャッシュフローの質が良く、企業のキャッシュ管理がしっかりしています。
【課題】
- 北米や西欧での需要減少。
- 研究開発費等の間接費の増加による利益圧迫。
【結論】日立建機は、短期的には市況の影響を受けていますが、長期的な視点からは成長ポテンシャルを持つ企業です。特に、市場の回復を見据えた長期投資が適しています。慎重な投資家は、市場の動向を注視しつつ、投資機会を検討すべきです。