1.【概要】
株式会社マキタは、電動工具や園芸機器を主力事業とする企業です。2025年3月期第3四半期の業績は、売上収益が前年同期比3.3%増加し、営業利益も71.4%増となりました。しかし、地域によっては売上減少が見られ、為替影響が利益増加の一因となっています。本レポートでは、財務状況や業績動向を詳細に分析し、投資判断に役立つ情報を提供します。
2.【財務項目】
項目 | 2025年3月期第3四半期(百万円) | 前年同期比(%) |
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売上収益(Revenue) | 568,555 | +3.3% |
売上総利益(Gross Profit) | 203,166 | +22.0% |
営業利益(Operating Income) | 82,334 | +71.4% |
経常利益(Ordinary Income) | 83,742 | +81.6% |
営業利益率(Operating Margin) | 14.5% | +5.8ポイント |
営業外収益・費用(Non-Operating Income/Expenses) | 1,408 | +173.3% |
税引前利益(Pre-Tax Income) | 83,742 | +81.6% |
純利益(Net Income) | 61,843 | +89.5% |
総資産(Total Assets) | 1,104,553 | +4.6% |
流動資産(Current Assets) | 744,106 | +7.3% |
固定資産(Non-Current Assets) | 360,448 | -0.5% |
流動負債(Current Liabilities) | 137,643 | -5.4% |
固定負債(Non-Current Liabilities) | 36,166 | +2.9% |
純資産(Net Assets / Equity) | 930,744 | +6.3% |
株主資本(Shareholders’ Equity) | 923,774 | +6.4% |
流動比率(Current Ratio) | 540.7% | +71.6ポイント |
自己資本比率(Equity Ratio) | 83.6% | +1.4ポイント |
負債比率(Debt Ratio) | 19.0% | -1.9ポイント |
3.【損益計算書(Income Statement)からの洞察】
【売上収益(Revenue)の動向】
- 売上収益は前年同期比で3.3%増加しました。これは主に円安による為替影響と、国内市場での新製品の成功によるものです。ただし、北米やアジアでは売上が減少しており、地域間でバラつきがあります。
【利益率の分析】
- 営業利益率は14.5%と前年同期比で5.8ポイント上昇しました。これは売上総利益率の改善とコスト管理の効果によるものです。また、純利益率も10.9%と高水準を保っています。
【費用の構造】
- 売上原価は前年同期比で減少し、売上総利益率が改善しました。また、販売管理費は若干増加しましたが、営業利益の増加を支えています。研究開発費も増加傾向にあり、新製品開発に向けた投資が見られます。
4.【貸借対照表(Balance Sheet)からの洞察】
【資産の状況】
- 総資産は4.6%増加しており、流動資産が主に増加しています。これは現金及び現金同等物の増加が影響しています。一方、固定資産は微減しています。
【負債と資本のバランス】
- 純資産は6.3%増加し、自己資本比率も上昇しています。一方、流動負債は減少し、流動比率が大幅に改善しました。これにより、短期的な財務健全性が向上しています。
【財務の健全性】
- 有利子負債は減少しており、財務リスクが低下しています。株主資本の増加は主に利益の内部留保によるものです。
5.【キャッシュフロー計算書(Cash Flow Statement)からの洞察】
【営業キャッシュフロー(Operating Cash Flow)】
- 営業キャッシュフローは110,813百万円で、純利益を上回っている。これは回収が早い営業債権や在庫管理の改善によるものです。
【投資活動と財務活動のキャッシュフロー】
- 投資活動では設備投資が続けられていますが、キャッシュフローはマイナスです。一方、財務活動では主に配当金支払いと借入金の減少によりキャッシュフローはマイナスです。
【フリー・キャッシュフロー(Free Cash Flow, FCF)】
- FCFは推計では95,486百万円(営業CF – 設備投資)と高水準で、企業の成長投資や株主還元に使用可能です。
6.【総括と投資判断】
【企業の成長性とリスクのバランス】
- マキタは収益性、成長性、財務健全性の全てにおいて強みを示していますが、北米やアジアの市場リスクに注意が必要です。
【株価の評価】
- 具体的な株価情報がないため、バリュエーション指標の計算はできませんが、現在の業績から見て割安である可能性が高いです。
【投資家へのアドバイス】
- 短期的には市場の地域差によりリスクが存在しますが、長期的には安定した成長が期待できるため、投資の候補となり得ます。
7.【分析・評価】
【収益性の分析・評価】
- 評価: 高い。
- 営業利益率: 14.5%
- 純利益率: 10.9%
【安全性の分析・評価】
- 評価: 非常に高い。
- 自己資本比率: 83.6%
- 流動比率: 540.7%
【生産性の分析・評価】
- 評価: 高い。
- 売上高に対する売上総利益率: 35.7%
【効率性の分析・評価】
- 評価: 中程度。
- 販売管理費: 120,831百万円(売上高に対する比率: 21.3%)
【成長性の分析・評価】
- 評価: 高い。
- 売上高: 568,555百万円(前年同期比+3.3%)
【キャッシュフローの分析・評価】
- 評価: 高い。
8.【課題】
- 北米やアジアでの売上減少傾向。
- 為替レートの変動リスク。
9.【結論】
マキタは現在、財務的に健全で、利益率も高いレベルを維持しています。しかし、地域ごとの市場動向によるリスクを考慮する必要があります。特にリスク回避志向のある投資家にとっては、長期保有の価値が高い企業と言えます。ただし、短期的には為替変動や特定地域の市場動向を注意深く観察すべきです。