6504 富士電機 決算分析レポート

2025年3月期第3四半期決算短信

1.【概要】

富士電機株式会社は、エネルギー、半導体、産業機器、食品流通など多岐にわたる事業を展開しています。2025年3月期第3四半期の業績は、売上高が前年同期比4.1%増の791,064百万円となり、営業利益は前年同期比18.7%増の68,431百万円、経常利益も前年同期比20.7%増の68,370百万円、親会社株主に帰属する四半期純利益は48.7%増の55,415百万円と、全体的に強い成長を見せています。本レポートでは、これらの財務状況や業績動向を詳細に分析し、投資判断に役立つ情報を提供します。

2.【財務項目】

財務項目金額(百万円)前期比
売上高(Revenue)791,064+4.1%
売上総利益(Gross Profit)217,263+7.9%
営業利益(Operating Income)68,431+18.7%
営業利益率(Operating Margin)8.65%+1.1ポイント
営業外収益・費用(Non-Operating Income/Expenses)-61-98.7%
経常利益(Ordinary Income)68,370+20.7%
純利益(Net Income)55,415+48.7%
総資産(Total Assets)1,295,287+1.9%
流動資産(Current Assets)761,685-0.2%
固定資産(Non-Current Assets)533,529+5.0%
流動負債(Current Liabilities)442,966-6.8%
固定負債(Non-Current Liabilities)153,133+13.9%
純資産(Net Assets / Equity)699,187+5.7%
株主資本(Shareholders’ Equity)637,994+5.9%
流動比率(Current Ratio)172.0%+11.2ポイント
自己資本比率(Equity Ratio)49.3%+1.9ポイント
負債比率(Debt Ratio)102.4%-8.9ポイント

3.【損益計算書(Income Statement)からの洞察】

【売上高(Revenue)の動向】

  • 売上高は前年同期比4.1%増加しました。これは主に、エネルギーやインダストリー部門での需要増加が影響しています。

【利益率の分析】

  • 営業利益率は8.65%と前年同期比で1.1ポイント上昇しており、売上高の伸びを超える営業利益の伸びが見られます。
  • 純利益率は7.01%で、かなりの増加が見られます。これは特別利益の寄与も大きいです。

【費用の構造】

  • 売上原価は前年同期比2.8%増加しましたが、売上高の伸びに比べると低く、効率的なコスト管理がなされていることを示しています。
  • 販売費及び一般管理費は3.5%増加しており、営業活動の拡大に伴う費用増が見られます。

4.【貸借対照表(Balance Sheet)からの洞察】

【資産の状況】

  • 総資産は前年比で1.9%増加しており、固定資産の増加(5.0%)が主な要因です。
  • 流動比率は172.0%と高く、短期的な流動性に問題はありません。

【負債と資本のバランス】

  • 総負債は前年比で2.4%減少し、純資産は5.7%増加しました。これにより、自己資本比率は改善しています。
  • 固定負債の増加は主に長期借入金の増加によるものですが、全体的な負債比率は低下しています。

【財務の健全性】

  • 有利子負債は減少しており、財務健全性が向上しています。
  • 株主資本が増加しており、自己株式の売却による利益も見られます。

5.【キャッシュフロー計算書(Cash Flow Statement)からの洞察】

【営業キャッシュフロー(Operating Cash Flow)】

  • 営業キャッシュフローは96,178百万円と大幅に増加し、純利益を上回っています。これは、営業活動からのキャッシュ創出能力が高いことを示しています。

【投資活動と財務活動のキャッシュフロー】

  • 投資活動によるキャッシュフローはマイナスで、主に設備投資がキャッシュを消費しました。
  • 財務活動では、借入金の返済や配当金の支払いによりキャッシュが減少しています。

【フリー・キャッシュフロー(Free Cash Flow, FCF)】

  • フリー・キャッシュフローは54,376百万円(営業キャッシュフロー – 投資活動によるキャッシュフロー)で、前期比で増加しており、配当等への充当や再投資に利用可能です。

6.【総括と投資判断】

【企業の成長性とリスクのバランス】

  • 収益性、成長性ともに強く、財務健全性も向上しています。ただし、半導体部門の利益減少や外部環境の変動がリスク要因として挙げられます。

【株価の評価】

  • P/E比率やP/B比率等の具体的な数値は提供されていませんが、利益の成長率から見て、株価の評価が割安である可能性があります。

【投資家へのアドバイス】

  • 長期投資の視点では、強固な財務基盤と成長性を考慮すると魅力的です。短期的には市場の変動に注意が必要です。

7.【分析・評価】

【収益性の分析・評価】

  • 評価: 高い。
  • 営業利益率: 8.65%
  • 業界平均と比較しても高水準を維持しており、特に営業利益の伸びが顕著です。

【安全性の分析・評価】

  • 評価: 高い。
  • 自己資本比率: 49.3%
  • 流動比率: 172.0%

【生産性の分析・評価】

  • 評価: 良好。
  • 売上高に対する売上総利益率: 27.5%。効率的なコスト管理が見られます。

【効率性の分析・評価】

  • 評価: 良好。
  • 販売管理費の増加は見られますが、営業利益の成長を支えています。

【成長性の分析・評価】

  • 評価: 高い。
  • 売上高の成長に加え、利益率の改善も見られます。

【キャッシュフローの分析・評価】

  • 評価: 非常に良好。
  • 営業キャッシュフローの大幅な増加が確認できます。

8.【課題】

  • 半導体部門の営業利益減少が懸念材料。新たな生産能力の拡大がどの程度貢献するか注視が必要。
  • 中国市場の回復が遅れている点がリスクとして挙げられます。

9.【結論】

富士電機は強固な財務基盤と安定した成長性を示しており、長期投資の観点から見ると魅力的な銘柄です。ただし、特定の部門や地域市場の動向には注意が必要です。