1.【概要】
アンリツ株式会社は、通信計測、PQA(プロダクツ・クオリティ・アシュアランス)、環境計測を主力事業とする企業です。2025年3月期第3四半期の業績は、売上収益が前年同期比3.9%増加し、営業利益も24.4%増加しました。税引前利益や四半期利益もそれぞれ28.6%、25.1%増加しています。本レポートでは、財務状況や業績動向を詳細に分析し、投資判断に役立つ情報を提供します。
2.【財務項目】
項目 | 金額 | 前年同期比 |
---|---|---|
売上収益(Revenue) | 80,840百万円 | +3.9% |
売上総利益(Gross Profit) | 38,538百万円 | +6.3% |
営業利益(Operating Income) | 6,419百万円 | +24.4% |
営業利益率(Operating Margin) | 7.9% | +1.3ポイント |
営業外収益・費用(Non-Operating Income/Expenses) | 830百万円(収益) | 算出不可 |
税引前利益(Ordinary Income) | 7,247百万円 | +28.6% |
四半期利益(Net Income) | 4,905百万円 | +25.1% |
総資産(Total Assets) | 162,392百万円 | +0.8% |
流動資産(Current Assets) | 107,874百万円 | +1.9% |
固定資産(Non-Current Assets) | 54,517百万円 | -1.3% |
流動負債(Current Liabilities) | 28,206百万円 | -7.8% |
固定負債(Non-Current Liabilities) | 7,437百万円 | +49.7% |
純資産(Net Assets / Equity) | 126,747百万円 | +1.0% |
株主資本(Shareholders’ Equity) | 126,747百万円 | +1.0% |
流動比率(Current Ratio) | 382.5% | +37.4ポイント |
自己資本比率(Equity Ratio) | 78.1% | +0.2ポイント |
負債比率(Debt Ratio) | 21.9% | -0.2ポイント |
3.【損益計算書(Income Statement)からの洞察】
【売上収益(Revenue)の動向】
- 売上収益は前年同期比3.9%増加しており、特にPQA事業の11.9%増が貢献しています。通信計測事業も微増で、環境計測事業が16.9%の成長を示しています。
【利益率の分析】
- 営業利益率は前年同期から1.3ポイント上昇し、7.9%となりました。コスト管理が改善し、収益性が高まっています。
- 具体的な業界平均との比較データはありませんが、利益率の向上はポジティブな動向です。
【費用の構造】
- 売上原価は42,302百万円(前年同期比+1.9%)と増加しており、売上成長に伴うコスト上昇が見られます。
- 販売費及び一般管理費は24,833百万円(前年同期比+2.8%)で、営業利益の増加を支える一方で、費用効率の更なる改善が求められます。
- 研究開発費は7,066百万円(前年同期比+1.6%)で、技術開発への継続的な投資が確認できます。
4.【貸借対照表(Balance Sheet)からの洞察】
【資産の状況】
- 総資産は微増で、流動資産の増加が主な要因です。これは営業活動の好調さを反映しています。
- 流動比率が382.5%と非常に高く、流動性に問題はありません。
【負債と資本のバランス】
- 自己資本比率が78.1%と高く、財務健全性が保たれています。
- 固定負債が前年同期比で49.7%増加している点は注目すべきで、長期的な負債の管理が必要です。
【財務の健全性】
- 有利子負債が減少しており、財務負担が軽減されています。特に短期借入金が大幅に減少しています。
- 株主資本は微増しており、資本政策が安定していることが伺えます。
5.【キャッシュフロー計算書(Cash Flow Statement)からの洞察】
【営業キャッシュフロー(Operating Cash Flow)】
- 営業活動によるキャッシュフローは16,595百万円で、純利益を上回っています。営業キャッシュフローの増加は企業のキャッシュ生成能力の強さを示しています。
【投資活動と財務活動のキャッシュフロー】
- 投資活動によるキャッシュフローはマイナス2,426百万円で、設備投資などが続いていますが、前年同期比で若干改善しています。
- 財務活動では、配当金の支払いによりキャッシュフローがマイナス6,720百万円となっています。
【フリー・キャッシュフロー(Free Cash Flow, FCF)】
- フリー・キャッシュフローは14,168百万円とプラスで、前年同期比で大幅に増加し、企業の内部資金生成能力が高いことを示しています。
6.【総括と投資判断】
【企業の成長性とリスクのバランス】
- 収益性は増加し、財務健全性も維持されていますが、固定負債の増加には注意が必要です。特にPQAと環境計測事業の成長が目立ちます。
【株価の評価】
- 具体的なバリュエーション指標(P/E比率等)は記載されていないため、株価評価は難しいです。
【投資家へのアドバイス】
- 短期的には業績拡大が期待でき、長期的にも安定した成長が見込まれます。しかし、固定負債の動向や市場の変動には注意が必要です。
7.【分析・評価】
【収益性の分析・評価】
- 評価: 高い
- 営業利益率: 7.9%
- 収益性向上中で、特に営業利益の増加が注目されます。
【安全性の分析・評価】
- 評価: 高い
- 自己資本比率: 78.1%
- 流動比率: 382.5%
- 財務面での安全性が高い。
【生産性の分析・評価】
- 評価: 中庸
- 売上高に対する売上総利益率: 47.7%
- 売上総利益率は安定していますが、更なる効率化の余地があります。
【効率性の分析・評価】
- 評価: 中庸
- 販売管理費の増加率が売上増加率を上回るため、効率性改善の余地があります。
【成長性の分析・評価】
- 評価: 中庸
- 売上収益: 80,840百万円(前年同期比+3.9%)
- 特定のセグメントでは成長が見られますが、全体的には中庸な成長。
【キャッシュフローの分析・評価】
- 評価: 高い
- 営業キャッシュフローは強固で、企業のキャッシュ生成能力が高い。
8.【課題】
- 固定負債の増加を監視する必要があります。
- 販売費及び一般管理費の増加率が売上増加率を上回るため、費用効率の改善が必要。
9.【結論】
アンリツ株式会社は、特にPQAと環境計測事業で成長を示しており、財務的にも健全であることから、投資の対象として魅力的です。しかし、固定負債の動向や費用管理の改善が重要なポイントとなります。リスクを考慮しながらも、中長期的な投資ポジションを持つ価値があると考えられます。