6754 アンリツ 決算分析レポート

2025年3月期第3四半期決算短信

1.【概要】

アンリツ株式会社は、通信計測、PQA(プロダクツ・クオリティ・アシュアランス)、環境計測を主力事業とする企業です。2025年3月期第3四半期の業績は、売上収益が前年同期比3.9%増加し、営業利益も24.4%増加しました。税引前利益や四半期利益もそれぞれ28.6%、25.1%増加しています。本レポートでは、財務状況や業績動向を詳細に分析し、投資判断に役立つ情報を提供します。

2.【財務項目】

項目金額前年同期比
売上収益(Revenue)80,840百万円+3.9%
売上総利益(Gross Profit)38,538百万円+6.3%
営業利益(Operating Income)6,419百万円+24.4%
営業利益率(Operating Margin)7.9%+1.3ポイント
営業外収益・費用(Non-Operating Income/Expenses)830百万円(収益)算出不可
税引前利益(Ordinary Income)7,247百万円+28.6%
四半期利益(Net Income)4,905百万円+25.1%
総資産(Total Assets)162,392百万円+0.8%
流動資産(Current Assets)107,874百万円+1.9%
固定資産(Non-Current Assets)54,517百万円-1.3%
流動負債(Current Liabilities)28,206百万円-7.8%
固定負債(Non-Current Liabilities)7,437百万円+49.7%
純資産(Net Assets / Equity)126,747百万円+1.0%
株主資本(Shareholders’ Equity)126,747百万円+1.0%
流動比率(Current Ratio)382.5%+37.4ポイント
自己資本比率(Equity Ratio)78.1%+0.2ポイント
負債比率(Debt Ratio)21.9%-0.2ポイント

3.【損益計算書(Income Statement)からの洞察】

【売上収益(Revenue)の動向】

  • 売上収益は前年同期比3.9%増加しており、特にPQA事業の11.9%増が貢献しています。通信計測事業も微増で、環境計測事業が16.9%の成長を示しています。

【利益率の分析】

  • 営業利益率は前年同期から1.3ポイント上昇し、7.9%となりました。コスト管理が改善し、収益性が高まっています。
  • 具体的な業界平均との比較データはありませんが、利益率の向上はポジティブな動向です。

【費用の構造】

  • 売上原価は42,302百万円(前年同期比+1.9%)と増加しており、売上成長に伴うコスト上昇が見られます。
  • 販売費及び一般管理費は24,833百万円(前年同期比+2.8%)で、営業利益の増加を支える一方で、費用効率の更なる改善が求められます。
  • 研究開発費は7,066百万円(前年同期比+1.6%)で、技術開発への継続的な投資が確認できます。

4.【貸借対照表(Balance Sheet)からの洞察】

【資産の状況】

  • 総資産は微増で、流動資産の増加が主な要因です。これは営業活動の好調さを反映しています。
  • 流動比率が382.5%と非常に高く、流動性に問題はありません。

【負債と資本のバランス】

  • 自己資本比率が78.1%と高く、財務健全性が保たれています。
  • 固定負債が前年同期比で49.7%増加している点は注目すべきで、長期的な負債の管理が必要です。

【財務の健全性】

  • 有利子負債が減少しており、財務負担が軽減されています。特に短期借入金が大幅に減少しています。
  • 株主資本は微増しており、資本政策が安定していることが伺えます。

5.【キャッシュフロー計算書(Cash Flow Statement)からの洞察】

【営業キャッシュフロー(Operating Cash Flow)】

  • 営業活動によるキャッシュフローは16,595百万円で、純利益を上回っています。営業キャッシュフローの増加は企業のキャッシュ生成能力の強さを示しています。

【投資活動と財務活動のキャッシュフロー】

  • 投資活動によるキャッシュフローはマイナス2,426百万円で、設備投資などが続いていますが、前年同期比で若干改善しています。
  • 財務活動では、配当金の支払いによりキャッシュフローがマイナス6,720百万円となっています。

【フリー・キャッシュフロー(Free Cash Flow, FCF)】

  • フリー・キャッシュフローは14,168百万円とプラスで、前年同期比で大幅に増加し、企業の内部資金生成能力が高いことを示しています。

6.【総括と投資判断】

【企業の成長性とリスクのバランス】

  • 収益性は増加し、財務健全性も維持されていますが、固定負債の増加には注意が必要です。特にPQAと環境計測事業の成長が目立ちます。

【株価の評価】

  • 具体的なバリュエーション指標(P/E比率等)は記載されていないため、株価評価は難しいです。

【投資家へのアドバイス】

  • 短期的には業績拡大が期待でき、長期的にも安定した成長が見込まれます。しかし、固定負債の動向や市場の変動には注意が必要です。

7.【分析・評価】

【収益性の分析・評価】

  • 評価: 高い
  • 営業利益率: 7.9%
  • 収益性向上中で、特に営業利益の増加が注目されます。

【安全性の分析・評価】

  • 評価: 高い
  • 自己資本比率: 78.1%
  • 流動比率: 382.5%
  • 財務面での安全性が高い。

【生産性の分析・評価】

  • 評価: 中庸
  • 売上高に対する売上総利益率: 47.7%
  • 売上総利益率は安定していますが、更なる効率化の余地があります。

【効率性の分析・評価】

  • 評価: 中庸
  • 販売管理費の増加率が売上増加率を上回るため、効率性改善の余地があります。

【成長性の分析・評価】

  • 評価: 中庸
  • 売上収益: 80,840百万円(前年同期比+3.9%)
  • 特定のセグメントでは成長が見られますが、全体的には中庸な成長。

【キャッシュフローの分析・評価】

  • 評価: 高い
  • 営業キャッシュフローは強固で、企業のキャッシュ生成能力が高い。

8.【課題】

  • 固定負債の増加を監視する必要があります。
  • 販売費及び一般管理費の増加率が売上増加率を上回るため、費用効率の改善が必要。

9.【結論】

アンリツ株式会社は、特にPQAと環境計測事業で成長を示しており、財務的にも健全であることから、投資の対象として魅力的です。しかし、固定負債の動向や費用管理の改善が重要なポイントとなります。リスクを考慮しながらも、中長期的な投資ポジションを持つ価値があると考えられます。