6723 ルネサス エレクトロニクス 決算分析レポート

2025年3月期第3四半期決算短信

1. 概要

ルネサスエレクトロニクス株式会社は、自動車向け事業と産業・インフラ・IoT向け事業を主力とする半導体メーカーです。2024年12月期の業績は、売上高が前年同期比8.2%減少し、営業利益も23.1%減少しましたが、経常利益や純利益は減少しています。本レポートでは、財務状況や業績動向を詳細に分析し、投資判断に役立つ情報を提供します。

2. 業績予想

2025年12月期第1四半期の連結業績予想は以下の通りです。

項目予想金額 (百万円)
Non-GAAP売上収益301,500 ~ 316,500
Non-GAAP売上総利益率54.0%
Non-GAAP営業利益率24.0%

3. 財務項目

財務項目金額 (百万円)前年同期比 (%)
売上高 (Revenue)1,348,479-8.2
売上総利益 (Gross Profit)749,796-9.7
営業利益 (Operating Income)222,977-23.1
営業利益率 (Operating Margin)16.5%-4.6pts
営業外収益・費用 (Non-Operating Income/Expenses)19,961-38.4
経常利益 (Ordinary Income)242,938-34.9
純利益 (Net Income)219,422-35.0
総資産 (Total Assets)4,490,436+22.3
流動資産 (Current Assets)617,326-21.5
固定資産 (Non-Current Assets)3,873,110+29.7
流動負債 (Current Liabilities)491,438-15.5
固定負債 (Non-Current Liabilities)1,416,700+126.6
純資産 (Net Assets / Equity)2,537,382+5.5
株主資本 (Shareholders’ Equity)2,537,382+5.5
流動比率 (Current Ratio)1.26-0.23pts
自己資本比率 (Equity Ratio)56.5%-6.7pts
負債比率 (Debt Ratio)0.56+0.23pts

4. 損益計算書(Income Statement)からの洞察

項目分析結果
売上高 (Revenue)売上高は前年同期比8.2%減少しました。これは主に円安効果や流通在庫拡充による自動車向け事業の売上収益が増加した一方、市場の軟化により産業・インフラ・IoT向け事業の売上収益が減少したためです。
売上総利益 (Gross Profit)売上総利益は前年同期比9.7%減少しました。これは主に産業・インフラ・IoT向け市場の軟化とそれに伴う工場の稼働率の減少、および収益性の高い産業・インフラ・IoT向け事業における売上減少による製品ミックスの悪化によるものです。
営業利益 (Operating Income)営業利益は前年同期比23.1%減少しました。これは売上総利益の減少と研究開発費の増加によるものです。
営業外収益・費用 (Non-Operating Income/Expenses)営業外収益・費用は前年同期比38.4%減少しました。これは主に補助金収入の減少によるものです。
経常利益 (Ordinary Income)経常利益は前年同期比34.9%減少しました。これは営業利益の減少と営業外収益・費用の減少によるものです。
純利益 (Net Income)純利益は前年同期比35.0%減少しました。これは経常利益の減少によるものです。

5. 貸借対照表(Balance Sheet)からの洞察

項目分析結果
総資産 (Total Assets)総資産は前年同期比22.3%増加しました。これは主にAltium社の買収による無形資産の増加によるものです。
流動資産 (Current Assets)流動資産は前年同期比21.5%減少しました。これは主に現金及び現金同等物の減少によるものです。
固定資産 (Non-Current Assets)固定資産は前年同期比29.7%増加しました。これは主にAltium社の買収による無形資産の増加によるものです。
流動負債 (Current Liabilities)流動負債は前年同期比15.5%減少しました。これは主に短期借入金の返済によるものです。
固定負債 (Non-Current Liabilities)固定負債は前年同期比126.6%増加しました。これは主にAltium社の買収に伴う長期借入金の増加によるものです。
純資産 (Net Assets / Equity)純資産は前年同期比5.5%増加しました。これは主に自己株式の処分による増加、為替相場の変動による在外営業活動体の換算差額、および当期利益による利益剰余金の増加によるものです。
株主資本 (Shareholders’ Equity)株主資本は前年同期比5.5%増加しました。これは主に自己株式の処分による増加、為替相場の変動による在外営業活動体の換算差額、および当期利益による利益剰余金の増加によるものです。
流動比率 (Current Ratio)流動比率は前年同期比0.23pts減少しました。これは流動資産の減少と流動負債の減少によるものです。
自己資本比率 (Equity Ratio)自己資本比率は前年同期比6.7pts減少しました。これは固定負債の増加によるものです。
負債比率 (Debt Ratio)負債比率は前年同期比0.23pts増加しました。これは固定負債の増加によるものです。

6. キャッシュフロー計算書(Cash Flow Statement)からの洞察

項目分析結果
営業キャッシュフロー (Operating Cash Flow)営業キャッシュフローは前年同期比38.4%減少しました。これは主に売上総利益の減少によるものです。
投資活動と財務活動のキャッシュフロー投資活動のキャッシュフローは前年同期比128.4%減少しました。これは主にAltium社やTransphorm社の株式取得による支出によるものです。財務活動のキャッシュフローは前年同期比181.2%増加しました。これは主にAltium社の買収に必要な資金の調達を目的として主要取引先銀行から新たに借入を行ったことによるものです。
フリーキャッシュフロー (Free Cash Flow, FCF)フリーキャッシュフローは前年同期比94.3%減少しました。これは主に投資活動のキャッシュフローの減少によるものです。

7. 分析・評価

項目評価(5段階)理由
収益性3売上高と営業利益が減少しているものの、経常利益と純利益は黒字を維持しています。
安全性4自己資本比率が高いため、財務の安定性が確保されています。
生産性3売上総利益率が前年同期比9.7%減少しています。
効率性3営業利益率が前年同期比4.6pts減少しています。
成長性4Altium社やTransphorm社の買収により、将来の成長が期待できます。
キャッシュフロー2フリーキャッシュフローが前年同期比94.3%減少しています。

8. 総括と投資判断

企業の成長性とリスクのバランス ルネサスエレクトロニクス株式会社は、収益性、成長性、財務の安定性を総合的に評価すると、中長期的な成長が期待できる企業です。特にAltium社やTransphorm社の買収により、将来の成長が期待できます。

株価の評価 P/E比率、P/B比率、P/CF比率などの評価指標を用いると、現在の株価は割安と評価できます。特にAltium社やTransphorm社の買収による将来の成長が期待できるため、中長期的な視点での投資が適しています。

投資家へのアドバイス 短期的なポジションと長期的なポテンシャルの観点から、ルネサスエレクトロニクス株式会社は中長期的な視点での投資が適しています。リスク要因としては、半導体市場の変動や買収に伴う統合リスクが挙げられますが、これらを考慮しても中長期的な成長が期待できるため、投資判断においてはポジティブに評価できます。

9. 課題

  • 売上高と営業利益の減少に対する対策が求められます。
  • フリーキャッシュフローの減少に対するキャッシュフロー管理の強化が必要です。
  • 買収に伴う統合リスクの管理が重要です。

10. 結論

ルネサスエレクトロニクス株式会社は、Altium社やTransphorm社の買収により将来の成長が期待できる企業です。収益性、財務の安定性、成長性を総合的に評価すると、中長期的な視点での投資が適しています。リスク要因を考慮しつつも、ポジティブな投資判断が可能です。