1.【概要】:
大成建設は土木・建築・開発事業を主力とする総合建設企業です。2024年4-12月期の売上高は前年同期比+33.3%増の1.5兆円、営業利益は3.6倍の799億円と急成長を記録。投資有価証券売却益が3,299億円と特別利益が大きく寄与し、親会社株主帰属純利益は837億円(+324%)となりました。ただし現金預金が半減するなど課題も見られます。
2.【業績予想】:
項目 | 2025年3月期予想 | 対前期増減率 |
---|---|---|
売上高 | 1.99兆円 | +12.7% |
営業利益 | 8,700億円 | +228.5% |
親会社株主帰属純利益 | 8,300億円 | +106.1% |
3.【財務項目】:
財務項目 | 金額 (百万円) | 前年同期比 (%) |
---|---|---|
売上高 | 1,527,540 | +33.3% |
営業利益 | 79,958 | +356.6% |
営業利益率 | 5.2% | +3.7ポイント |
経常利益 | 92,573 | +268.9% |
親会社株主帰属純利益 | 83,770 | +324.0% |
総資産 | 2,375,170 | -8.1% |
流動資産 | 1,524,968 | -6.5% |
固定資産 | 850,201 | -10.7% |
流動負債 | 1,226,722 | -5.8% |
固定負債 | 226,014 | -29.3% |
自己資本比率 | 37.4% | +1.4ポイント |
流動比率 | 124% | 算出不可 |
4.【損益計算書からの洞察】:
項目 | 分析結果 |
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売上高増加要因 | 土木(+37.3%)・建築(+33.4%)が両輪で成長、開発事業も12.2%増 |
営業利益急拡大 | 建築事業が287億円赤字から110億円黒字転換、土木事業利益率18%に改善 |
特別利益の影響 | 投資有価証券売却益3,299億円が純利益の39%を占める |
5.【貸借対照表からの洞察】:
項目 | 分析結果 |
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現金急減 | 現金預金が4,347億→2,014億円に減少(-53.7%)資金運用面で注意必要 |
負債減少 | 有利子負債3,530億円(-6.2%)、自己資本比率37.4%と財務基盤強化 |
資産圧縮 | その他有価証券評価差額金1,542億→968億円に減少(株式相場下落の影響) |
6.【キャッシュフロー計算書からの洞察】:
項目 | 分析結果 |
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営業CF推計値 | 営業利益799億円+減価償却費117億円=916億円(※CF計算書非開示のため推定) |
投資活動 | 自社株買い439万株(293億円)実施、資本提携で平和不動産20.24%取得 |
7.【分析・評価】:
項目 | 評価(5段階) | 理由 |
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収益性 | 4 | 営業利益率5.2%と建設業界平均(3-4%)を上回るが、特別利益依存が課題 |
安全性 | 4 | 自己資本比率37.4%と業界最高水準、流動比率124%で短期支払能力充足 |
成長性 | 5 | 売上高+33%、営業利益+357%と業界をリードする成長率 |
効率性 | 3 | 総資産回転率0.64回と業界平均並み、開発事業のROA8.2%が優れる |
キャッシュフロー | 2 | 現金預金半減、営業CF推計916億円に対し投資CF△392億円で資金流出 |
8.【総括と投資判断】:
【成長性とリスクのバランス】
- 建設投資拡大を背景に本業好調、2025年度配当予想130円(前年比2倍)に魅力
- P/E比率8.3倍(予想EPS457円/株価3,800円推定)、建設業界平均15倍と割安
【投資家へのアドバイス】
- 短期的には株式市場変動のリスク(有価証券含み損968億円)に注意
- 長期的には国土強靭化需要を取り込みうる技術力と財務体力で優位性保持
9.【課題】:
- 現金預金の急激な減少(△53.7%)
- 投資有価証券評価損の潜在リスク(968億円の評価差額金)
- 営業利益のうち32%が特別利益依存
10.【結論】:
大成建設は公共投資拡大を背景に本業の収益力が急回復。自己資本比率37.4%の堅実な財務体質と年130円(予想)の配当利回り3.4%(株価3,800円仮定)が魅力。ただし現金流出ペースと株式市場へのエクスポージャーに要注意。短期的な市場変動リスクを許容できる投資家には、建設業界再評価の旗手として中長期保有が適する。PER8倍台の割安水準を勘案し、5段階評価で「4」を付与。資金流出改善の兆候を確認しつつ、段階的積立投資を推奨します。