7261 マツダ 決算分析レポート

2025年3月期第3四半期決算短信

1.【概要】:
マツダは自動車製造を主力事業とする企業です。2025年3月期第3四半期の業績は売上高3兆6,894億円(前年同期比+3.4%)を達成しましたが、営業利益1,483億円(同△25.9%)、純利益906億円(同△45.3%)と大幅減益となりました。北米販売の好調さと中国市場の急減速が対照的な結果です。本レポートでは財務状況の詳細分析を通じ、投資判断の指針を提供します。

2.【業績予想】:

項目予想値前期比備考
売上高5.0兆円+3.6%前回予想維持
営業利益2,000億円△20.2%販奨金増加影響
中国販売台数78千台△20.7%需要減退継続
為替想定(ドル/円)153円+8円増益要因

3.【財務項目】:

財務項目金額 (百万円)前年同期比 (%)
売上高3,689,419+3.4%
売上総利益794,095+3.4%
営業利益148,254△25.9%
営業利益率4.0%△1.5ポイント
経常利益156,769△34.4%
純利益90,579△45.3%
総資産3,967,102+4.6%
流動資産2,139,203+7.3%
固定資産1,827,899+1.6%
流動負債1,371,559△2.4%
固定負債783,571+24.6%
純資産1,811,972+3.1%
流動比率156%+10ポイント
自己資本比率45.2%△0.6ポイント
負債比率54.8%+0.6ポイント

4.【損益計算書からの洞察】:

項目分析結果
売上高北米+22%増が牽引(324千台/過去最高) vs 中国△20.4%減
利益率営業利益率4.0%に低下(前年同期5.6%)
費用構造販売奨励金1,043億円増+原材料高283億円増が主要要因

5.【貸借対照表からの洞察】:

項目分析結果
資産状況現預金+14.6%増(1兆653億円)、健全性維持
負債比率有利子負債+11.2%増だがネットキャッシュ3,855億円
健全性自己資本比率45.2%と自動車業界平均(35%程度)を上回る

6.【キャッシュフロー分析】:

項目分析結果
営業CF1,435億円(+前年同期比△31.6%)
投資CF△704億円(設備投資768億円)
フリーCF731億円(前年同期比△39.4%)
財務CF652億円増(配当金378億円支払い)

7.【分析・評価】:

項目評価(5段階)理由
収益性3営業利益率が同業平均(トヨタ8%)を下回る
安全性4ネットキャッシュ3,855億円で財務余裕あり
生産性31台当り営業利益15.3万円(前年22.0万円)低下
効率性3棚卸資産回転率4.91回→4.99回と微増
成長性3北米が好調も中国リスク顕在化
キャッシュフロー4フリーCF+731億円で安定性維持

8.【課題】:
(1) 中国販売台数78千台予想(前年比△19.7%)の大幅減収懸念
(2) 型式指定不正問題でブランド毀損リスク継続
(3) 1円改善で60億円増益する為替依存体質
(4) 販売奨励金増加による利益圧迫(年率1,390億円増)

9.【結論】:
マツダの投資判断においては、北米市場の持続的成長(販売台数+22%)と中国リスクの管理(販売△20.4%)のバランスが鍵となります。財務健全性(自己資本比率45.2%)とネットキャッシュ3,855億円が安全弁となるものの、営業利益率4.0%は主要競合他社に比べ低水準です。短期的には為替メリット(1円改善で60億円増益)と北米販売好調が材料ですが、中長期ではEVシフト対応とコスト構造改革の進捗が重要です。慎重派投資家には配当利回り2.8%(予想55円/現株価想定)が魅力ですが、成長期待の高い投資家には収益改善の具体策提示が必要でしょう。現時点では「保有継続」が妥当との評価ですが、四半期ごとのコスト改善度合いを注視する必要があります。