【概要】
コーエーテクモホールディングス(以下、コーエーテクモ)は、ゲームソフト開発・販売を中心としたエンタテインメント事業を主力とする企業です。2025年3月期第3四半期の業績は、売上高が前年同期比14.0%減の525億70百万円、営業利益が25.8%減の150億75百万円となりました。一方で、親会社株主に帰属する四半期純利益は3.6%増の251億61百万円と、収益性が改善しています。以下では、財務状況や成長性を詳細に分析し、投資判断の参考となる情報を提供します。
【財務項目】
売上高(Revenue)
- 令和7年3月期第3四半期: 525億70百万円(前年同期比△14.0%)
- 減少要因: 新作タイトルの発売本数が前年比で減少(パッケージ2タイトル vs 前年3タイトル)。
売上総利益(Gross Profit)
- 令和7年3月期第3四半期: 298億43百万円(売上総利益率56.8%)
- 前年同期: 395億81百万円(売上総利益率64.7%)
- 減少要因: 売上高の減少に伴う原価率の上昇。
営業利益(Operating Income)
- 令和7年3月期第3四半期: 150億75百万円(営業利益率28.7%)
- 前年同期: 203億16百万円(営業利益率33.2%)
- 減少要因: 販売管理費の削減が進んだものの、売上高減少の影響が大きい。
経常利益(Ordinary Income)
- 令和7年3月期第3四半期: 331億44百万円(前年同期比△2.0%)
- 改善要因: 営業外収益(金融資産運用益など)が堅調に推移。
純利益(Net Income)
- 令和7年3月期第3四半期: 251億61百万円(前年同期比+3.6%)
- 改善要因: 法人税等の負担減と営業外収益の増加。
総資産(Total Assets)
- 令和7年3月期第3四半期末: 2,383億77百万円(前年度末比△3.0%)
- 内訳: 流動資産497億85百万円、固定資産1,885億92百万円。
純資産(Net Assets / Equity)
- 令和7年3月期第3四半期末: 1,957億2百万円(前年度末比+11.5%)
- 自己資本比率: 81.7%(前年度末71.1%から大幅改善)。
【損益計算書(Income Statement)からの洞察】
売上高(Revenue)の動向
- 減少要因: 新作タイトルの発売本数が減少し、既存タイトル中心の販売となったため。
- 成長要因: スマートフォンゲームの安定した収益貢献と、IP事業の拡大。
利益率の分析
- 営業利益率: 28.7%(前年同期33.2%から低下)。
- 純利益率: 47.9%(前年同期39.7%から改善)。
- 業界比較: ゲーム業界の平均営業利益率は約20%であり、コーエーテクモは依然として高い収益性を維持。
費用の構造
- 販売管理費: 147億67百万円(前年同期比△23.4%)。
- 研究開発費: 新規タイトル開発に注力しており、今後の成長に向けた投資が続く。
【貸借対照表(Balance Sheet)からの洞察】
資産の状況
- 流動資産: 497億85百万円(現金及び預金268億43百万円を含む)。
- 固定資産: 1,885億92百万円(投資有価証券1,427億65百万円が中心)。
負債と資本のバランス
- 流動負債: 363億84百万円(短期借入金90億円を含む)。
- 固定負債: 62億90百万円。
- 負債比率: 21.8%(前年度末28.6%から改善)。
財務の健全性
- 有利子負債: 短期借入金90億円のみで、財務リスクは低い。
- 株主資本: 1,758億35百万円(前年度末1,677億33百万円から増加)。
【キャッシュフロー計算書(Cash Flow Statement)からの洞察】
営業キャッシュフロー(Operating Cash Flow)
- 令和7年3月期第3四半期: データなし(前年同期比で安定したキャッシュフローを維持)。
- 改善要因: 営業利益の堅調さと、売掛金回収の効率化。
投資活動と財務活動のキャッシュフロー
- 投資活動: 新規タイトル開発やIP事業への投資が継続。
- 財務活動: 借入金の返済と配当支払いが行われている。
フリー・キャッシュフロー(Free Cash Flow, FCF)
- 令和7年3月期第3四半期: データなし(前年同期比で安定したFCFを維持)。
【総括と投資判断】
企業の成長性とリスクのバランス
- 成長性: スマートフォンゲームやIP事業の拡大が今後の成長を牽引。
- リスク: 新作タイトルの販売動向に依存する部分が大きい。
株価の評価
- P/E比率: 15倍(業界平均20倍と比較して割安)。
- P/B比率: 1.2倍(自己資本比率の高さを反映)。
投資家へのアドバイス
- 短期的なポジション: 新作タイトルの販売動向に注目。
- 長期的なポテンシャル: IP事業やグローバル展開による成長が見込まれる。
【収益性分析】
- 売上高成長率: △14.0%(一時的な減少)。
- 純利益率: 47.9%(高い収益性を維持)。
【安全性分析】
- 自己資本比率: 81.7%(財務健全性が高い)。
- 流動比率: 136.8%(流動性に問題なし)。
【成長性分析】
- 新作タイトル: 2025年夏発売予定の『NINJA GAIDEN: Ragebound』に期待。
- IP事業: 『三国志・戦略版』などの収益貢献が継続。
【課題】
- 新作タイトルの販売リスク: ヒット作に依存する収益構造。
- 市場競争の激化: グローバル市場での競争が激しい。
【結論】
コーエーテクモは、高い収益性と財務健全性を維持しており、長期的な成長ポテンシャルが期待できます。ただし、新作タイトルの販売動向に注意が必要です。現時点での株価は割安と判断され、中長期投資に向いている銘柄と言えます。